学位論文はひとつの作業ではありません。文献レビュー、研究デザイン、倫理審査の申請、分析、図、そしていくつかの章が組み合わさり、それぞれが互いに整合していなければなりません。学生がつまずくのはまさにここです。計画書の検出力分析と結果の章の検定が違っていたり、プロトコルにないフォローアップが図に描かれていたりします。このガイドでは、現実的な学位論文の研究をひとつ、Neutropic で段階ごとに追っていきます。各段階について、学生が入力したプロンプト、返ってきた結果、指導教員に見せる前に確認すべき点をまとめました。
研究の問いは「4週間の心拍変動(HRV)バイオフィードバックは大学生の知覚ストレス(PSS-10)を下げるか」です。すべて 例 · 研究ワークフロー に入っています。どのアカウントでも マイライブラリ から開ける読み取り専用の例で、1つのチャットに10ターン、サイトの4言語でそれぞれ実行したものです。以下の引用と数値は日本語版の実行から取りました。言語ごとに少しずつ違う設計が出てきたこと自体が、結果は自分で読んで確かめる必要があるという良い例になっています。
始める前に:1つの研究に1つのプロジェクト
研究(または章)ごとにプロジェクトを作り(マイライブラリ の横のフォルダーボタン)、すべての段階をその中で進めます。プロジェクトには次の3つが集まります。
- 中のチャットが作ったすべてのアーティファクト。レポート、図、表、原稿が一か所にまとまり、後のメッセージでどれでも @ で参照 できます。
- プロジェクトメモリ。 「主要アウトカムは PSS-10」「対照群は通常ペースの呼吸」のように一度決まったことは、以降のチャットの前提になります。例では各ターンの冒頭に Applied n decision(s) settled in other chats of this project という行が表示され、クリックするとどの決定が使われたかを確認できます。
- アップロードしたもの。データ、PDF、指導教員のコメントなどです。
ここから1ターンずつ見ていきます。各段階には詳しい解説記事があるので、ここではリンクだけにして繰り返しません。
第1段階 — 文献レビュー
/research 次のテーマを論文データベース(OpenAlex, PubMed, Crossref, Semantic Scholar, Europe PMC)とウェブで調査し、研究のタイムライン、主要な知見、マイルストーン研究、今後の方向性を整理してください: 心拍変動(HRV)バイオフィードバックは成人の知覚ストレスを下げるか? ランダム化比較試験に絞り、効果量を報告してください。
返ってくるのは、すべての文に実際に検索された出典への番号付き引用が付いたレビューレポートです。見つかった論文のスクリーニング表、研究タイムライン、引用グラフ、マインドマップも一緒に生成されます。ここで特定されたメタ分析と多群 RCT が、以降すべての段階の基準になります。

指導教員に見せる前に: 議論の土台になる3〜4本の論文は自分で開き、主張が論文の内容と一致しているか確かめてください。レポートは文献の地図であり、読むことの代わりにはなりません。詳しくは:文献レビュー。
第2段階 — 仮説
/hypothesis このセッションで集めたHRVバイオフィードバックと知覚ストレスの文献をもとに研究空間をマッピングし、ギャップと矛盾する知見を列挙し、新規性・妥当性・検証可能性で順位付けした検証可能な仮説を、根拠と出典とともに生成してください。
研究空間のマップ、文献のギャップと矛盾、そして根拠と出典の付いた検証可能な仮説のランキングが返ってきます。例では分析の後、6番目のターンで実行しましたが、実際の学位論文では文献レビューの直後に実行してください。採用した仮説がデザインの主要アウトカムになるからです。選んだ仮説が実際に収集できる測定値を指しているか 確認しましょう。詳しくは:仮説。
第3段階 — 実験デザイン
/experiment-design 4週間のHRVバイオフィードバックプログラムが、能動的対照群と比べて大学生の知覚ストレス(PSS-10)を下げるかを検証する2群ランダム化実験を設計してください。関連研究の方法を根拠にし、参加者・測定・プロトコルの流れ・検出力分析を含む設計レポートを作成してください。
設計レポートは、プロジェクト全体で最も繰り返し使う文書です。日本語版の実行では、仮説 H1〜H3(それぞれ検定方法を明記)と、2群 × 事前・事後の混合デザインが示されました。割付はブロックサイズ4の置換ブロック法による1:1で、解析担当者には群情報を秘匿します。両群とも1日15分・週5日・4週間で、介入群は共鳴周波数の呼吸ペーサーと指先 PPG のリアルタイムフィードバックを使い、対照群は同じ外観のアプリで毎分12回の固定リズム呼吸と擬似フィードバックを行います。さらに、測定(PSS-10、STAI-Y、安静時 RMSSD、アドヒアランス)、選択・除外基準、サンプルサイズ、有意水準と副次評価項目の FDR 補正、各設計判断の根拠と出典が含まれます。あわせて検出力曲線、プロトコルのフロー図、期待される結果の図(実測値ではないと明記)、参考研究のデザイン比較表も生成されます。

詳しくは:実験デザイン。
デザインから事前登録と倫理審査(IRB)の申請へ
ほとんどの事前登録テンプレート(OSF、AsPredicted)と倫理審査の申請書が尋ねる核心の質問は共通していて、設計レポートはその多くにすでに答えています。
- 仮説: 主仮説と副仮説が分かれていて、それぞれに検定方法が書かれています。
- デザインと割付: 2群並行、1:1の置換ブロック法。
- サンプルサイズ: 前提(d = 0.55、事前・事後相関 r = 0.55、α = .05、検出力 .80)を明記した検出力分析で各群48名。約15%の脱落を見込んだ募集目標は114名。
- 測定: 尺度名、測る内容、得点範囲。
- 適格基準: 選択・除外基準と、各除外の理由。
- 解析計画: 主解析モデル、有意水準、副次評価項目の FDR 補正。
- 手順: スクリーニングから事後評価までのプロトコルのフロー図。エクスポートして申請書に使えます。

設計レポートに 含まれない のは、所属機関ごとに異なる部分です。同意書と研究参加者への説明文書、リスクと利益の評価、データの管理と保管、謝礼、募集資料などです。これらは自分で書く必要があります。同じチャットで @experiment_design.md をもとに、わかりやすい研究参加者向け説明文書の下書きを書いて のように頼むこともできますが、結果は所属機関の倫理審査委員会の書式に合わせて直す下書きとして扱ってください。
提出前に3つ確認しましょう。 1つめは、検出力分析と解析計画が同じ検定を指しているかどうかです。例では検出力分析が t 検定/ANCOVA を併記し、H1 は ANCOVA、H3 は線形混合効果モデルで検定するとしています。主解析はひとつに決めてください。2つめは、根拠の項目のうち「出典なし」と示されたものです。例では PSS-10 の足切り(14点以上)がそうでした。慣例に頼っている部分なので、自分で裏付けを確認しましょう。3つめは盲検化の記述です。擬似フィードバックを使っても、バイオフィードバック試験の参加者は自分がどちらの群かに気づくことがよくあります。
第4段階 — データ分析
データをアップロードして(入力欄の + ボタン。CSV、XLSX、SPSS .sav など、最大 1 GB)、次のように依頼します。
/analyze アップロードした pss_trial.xlsx(2群、PSS-10 の事前/事後)を確認してください。データ品質とベースラインの均衡を点検し、変化量を計算して、図付きの再現可能な分析レポートを作成してください。
欠測と重複のチェック、ベースラインの均衡(年齢と事前 PSS-10 の検定)、正規性の確認、変化量と図が返ってきます。それを作ったコードは 再現性 ボタンの中にあります。例のファイルは80名(各群40名)のデモデータで、デザインが求める人数より少なくなっています。自分のデータなら、レポートの N が登録記録と一致しているか、除外が事前登録どおりに行われたかを 確認しましょう。詳しくは:データ分析。
第5段階 — 統計
/stats pss_trial.xlsx を使い、バイオフィードバック群の PSS-10 の低下が対照群より大きいかを検定してください。デザインを特定し、前提を確認し、検定を選んで正当化し、効果量を95%信頼区間と達成検出力とともに報告してください。
レポートはデザインの特定、前提の確認、検定の選択を経て、感度分析付きの効果量まで進みます。デモデータでは、PSS-10 の低下量の群間差は有意で、Cohen's d ≈ 1.23 でした。

指導教員に見せる前に: 観測された効果から計算した「達成検出力」は、p 値がすでに示している以上のことを教えてくれません。報告する価値があるのは感度分析、つまり自分の N で検出できる最小の効果です。報告する検定が事前登録したものと同じかも確認してください。詳しくは:統計。
第6段階 — 図とイラスト
/figure このセッションで設計した実験の研究フロー図を編集可能なベクターで描いてください: 募集 → スクリーニング → ランダム化 → HRVバイオフィードバック(4週間) vs 能動的対照 → 事後テスト(PSS-10) → 3か月フォローアップ。ジャーナルのテンプレートを使ってください。
/illustrate 方法の図として使うHRVバイオフィードバックのセットアップを科学イラストで描いてください: 胸ストラップ型ECGセンサーと指先PPGセンサーを着け、ノートPCの呼吸ペーシング画面に合わせて呼吸する着席した参加者。セミフラットスタイル、白背景。
フロー図は本物のベクター図です。ワークスペースで編集 でボックスを動かしたりラベルを直したりでき、SVG・PNG・PDF・PPTX でエクスポートできます。図がデザインと合っているか 確認しましょう。このプロンプトは3か月フォローアップを求めていますが、日本語版の設計レポートの測定時点は事前と事後だけです。こうした食い違いは見落としやすく、審査員にはすぐ気づかれます。生成されたイラスト内のラベルも校正しましょう。図中の英語ラベルに綴りの崩れが出ることがあります。詳しくは:図。
第7段階 — 章を書く
/write このセッションの文献・設計・分析をもとに、原稿の方法と結果のセクションを書いてください。すべての主張は引用またはセッションの結果に結び付けてください。
原稿はモデルの記憶ではなく、セッションのアーティファクトから書かれます。結果の数値は統計レポートから、引用はスクリーニング済みの文献から取られ、図は本文で最初に触れる位置に入り、最後に番号付きの参考文献リストが付きます。

指導教員に見せる前に: 数値は統計レポートと、[n] は該当論文と一つずつ照合してください。そのうえで文章を自分の言葉で書き直しましょう。審査委員会が読むのはその原稿です。パネルのダウンロードボタンから DOCX、LaTeX、PDF、Markdown でエクスポートできます。詳しくは:論文執筆。
第8段階 — レポートレビュー
/report-review このセッションで書いた原稿を独立してレビューしてください — 主張、方法、統計、引用された根拠、再現性 — そして優先順位付きのレビューレポートを書いてください。
レポートレビューは2人目の読み手です。データから統計を計算し直し、主張を一つずつ出典と照らし合わせ、問題を優先度順に並べます。ほかの人が読む前に、ここで見つかった問題を直しておきましょう。詳しくは:レポートレビュー。
第9段階 — 論文査読
/peer-review このセッションで書いた原稿を Applied Psychophysiology and Biofeedback の基準で査読してください:ジャーナルプロファイルと投稿規定、類似論文、査読者5名のスコア、編集判定、修正ガイド、推奨ジャーナルまで。
論文査読は投稿のプロセスをシミュレーションします。投稿先ジャーナルのプロファイルと投稿規定、そのジャーナルに載った類似論文、スコアを付ける査読者5名、編集判定(日本語版の例の原稿は大幅改訂)、修正ガイド、代わりのジャーナルのリストが返ってきます。

結果を予測する道具ではなく、査読を予行演習する道具として使ってください。修正ガイドは、草稿を審査委員会に出す前の ToDo リストとしても使えます。詳しくは:論文査読。
実践のヒント
- 1つの研究に1つのプロジェクト。 研究が3つある学位論文ならプロジェクトも3つです。アーティファクトとメモリが混ざらず、各章の出典をたどれます。
- 説明し直さず @ で参照。 入力欄で
@を打つと以前のアーティファクトを選べます。例:@experiment_design.md に合わせて方法の節を直して - 決めたことは言葉にする。 メモリはチャットで実際に確定した内容を保持します。「PSS-10 の足切りは14点にする」のようにはっきり伝えておくのが、以降のチャットに確実に守らせる一番の方法です。
- 本物の資料をアップロード。 データ、指導教員が書き込んだ PDF、ジャーナルの投稿規定。エージェントは読めるものしか使えません。
- トークンに注意。 例の10ターンは、Basic レベルと Gemini 3.8 Flash でマネージドトークンを約160万〜200万使いました。Free プランは月に約300万、1日の上限が約75万なので、Free ではこうしたワークフローを数日に分けて進めましょう。有料プランは両方の上限が大きく、プレミアムモデルも使えます。詳しくはプランとトークン。
Neutropic は下書きと点検を担い、著者はあなたです
AI の利用に関する所属大学の規則が最優先です。規則を読み、ツールをどう使ったかを指導教員に伝えましょう。Neutropic はすべてのステップを確かめられるようにします。引用は実際に検索された出典を指し、統計にはそれを出したコードが付き、レポートレビューが数値を再確認します。検証はしやすくなりますが、判断はあなたのものです。アイデア、決定、最終的な文章、そしてその責任はすべてあなたにあります。自分で読んだ論文だけを引用し、口頭試問で弁護できない段落は提出しないでください。
マイライブラリから 例 · 研究ワークフロー を開いて10ターンをすべて読み、自分のプロジェクトを作って、自分の問いで最初の段階を始めてみましょう。


